今年度は、昨年度行った、現場よりサンプリングした材料について、根を採取し、TDRを用いてその比誘電率の測定を行った結果について論文(Journal of Hydrology)にまとめた。 論文では、土壌中における植物根の存在がTDRにおける土壌水分量の測定値に影響を与えるであろうという前提で研究を進めた。この研究で使用した草本植物の根は、約70%の水分量を有しており、誘電率は水よりも低かった。この事実は、水分を含んだ根を土壌水分とは異なる成分として養えていく必要があることを意味している。つまり、砂丘砂のように、常に根よりも土壌の水分が低い場合、根の存在は水分の過大評価につながるし、黒ボク土のように、Topp式が使えない場合、根の存在が、水分の過小評価につながる可能性がある。 Dobson等の4相モデルを用いて、砂丘砂での水、根、土壌、空気の体積、と各々の比誘電率、5相モデルを用いて、黒ボク土での水、根、土壌、結合水、空気の体積、と各々の比誘電率を与えることにより、TDR測定誘電率に対する各成分の感度分析を行った。その結果、根の占有率が大きくなるにつれ、両土壌において根の影響が非常に大きくなっていくことを示した。5%の根密度がTDRの誘電率測定値に対し、砂丘砂で26%、黒ボク士で16%の過大評価を与えた、これは水分換算で砂丘砂で15%、黒ボク土で40%であった。 砂丘砂に対する4相モデルでは、既知のθ(土壌水分率)に対し、土壌の誘電率、根容積をかなり精度よく推定することが可能であった。黒ボク土に対する5相モデルでは、土壌の誘電率を最適化して与えれば、根容積を推定することは可能であった。また根容積の推定値はモデルパラメータαについてはそれ程鋭敏ではなかった。従って、根の誘電率をさらに詳しく調べることにより、TDRによる対象土壌の誘電率測定値から、根容積を推定することが可能であることが分かった。
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