本年度は野外から採取した植物根および胞子からのVA菌根菌DNAの抽出法と増幅(PCR法)に用いるプライマーの検討を行った。菌根からの菌DNAの抽出法では、阻害要因となる植物多糖類とフェノール物質の除去に重点をおいた方法となっている。これら反応阻害物質の濃度は植物種だけでなく、生育ステージや季節変動も大きいので、目的とするあらゆる場に対応可能な方法の確立をめざした。具体的にはDNA抽出法として(1)CTABによる細胞質溶出法。(2)Boil法とフェノール抽出法を組合わせた改良型の方法を試みた。検討の結果、後者の方法によりPCRに供することができる高純度のDNAを得ることが可能であった。また菌分類群の同定に用いるPCRプライマーの検討として、すでに報告されているVA菌根菌18SrDNAを特異的に増幅させるVANS1プライマーと分類群(科・属)に特異的なVAGIGA、VAACAU、VAGLOプライマーをPCRに使用した。その結果nested PCRと呼ばれる方法(1回目のPCRでユニバーサルプライマーであるSS38とNS21を用いて増幅を行い、2回目の反応では1回目での増幅産物を鋳型に特異的プライマーをもちいて増幅を行う方法)により菌根DNA抽出物からPCR産物を得ることができた。次に増幅産物が菌根菌に由来するかどうかを確かめるため、増幅産物の塩基配列を決定し系統解析を行ったところ、VAACAU、VAGLOプライマーでPCRを行ったものは菌根菌に由来する増幅産物と確認できたが、VAGIGAプライマーによる増幅産物は菌根菌以外の子嚢菌類に由来することが認められた。このことからVAGIGAプライマーについては新たなプライマー設計が必要であることが認められた。
|