研究概要 |
遊離肝細胞においてノルアドレナリン(NA,50nM)は、細胞内カルシウムイオン濃度([Ca^<2+>]_i)に対して、1)振動性の増減、2)後半に漸減するプラトー相を伴った上昇、および3)プラトー相から振動性変動に変わる変化のいずれかを惹起した。25nMおよび50nMでは振動性変動が大半であり、100nMおよび1μMではプラトー相を伴った上昇が多く認められた。Sulfonated aluminium phthalocyanine(SALPC,5μM)による光増感作用は、[Ca^<2+>]_iに対して、1)無効、2)単相性のスパイク状変動、あるいは3)プラトー相を伴った増加のいずれかを引き起こした。50nM NA刺激による振動性変動は光増感作用によって完全に消失したが、通常プラトー相を伴った上昇を引き起こす200nM NAを同一標本に引き続き加えたところ、振動性変動が再び現れた。以上の知見から、光増感作用は肝細胞にたいしてアドレナリン作動性受容体を脱感作することが示唆された。 脂質を分泌する外分泌腺であるハーダー腺はプロトポルフィリンIX(PPIX)を含むポルフィリンを腺細胞内に大量に含有しているが、その生理学的な意義は不明である。本研究では[Ca^<2+>]_i変動に焦点をあてて検討した。Ca^<2+>感受性蛍光色素であるfura-2を負荷した腺細胞に紫外励起光(340nmおよび380nm)を照射したところ、[Ca^<2+>]_iが上昇した。これは紫外光によって光増感作用が引き起こされたことを示唆する。可視光カルシウムプローブであるfluo-3を負荷して[Ca^<2+>]_i変動を検討したところ、10μMカルバコールは[Ca^<2+>]_iを上昇させた。カルバコール非存在下では不変であった。SALPCと可視光による光増感作用が[Ca^<2+>]_iを上昇させることはすでに確認されている。従って本知見はラットのハーダー腺に存在するPPIXは光感受性物質としての役割を担っていて、光によって[Ca^<2+>]_iが上昇し、それに続いて脂質分泌が惹起されるものと考えた。
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