重金属汚染土壌の修復に植物を利用したフィトリメディエーションが注目されている。しかし植物の機能を遺伝子工学的手法を用いて強化し、効率を上げるといった研究はいままでなされていなかった。今年度はまず、様々な重金属を高濃度に蓄積することが知られているカラシナを材料として、カドミウム(Cd)無毒化機構に関与する遺伝子の単離を試みた。まずカラシナを種々のCd濃度下で生育させ、生育可能な濃度を検討した。その結果、10μMでは葉の黄化が見られたものの生育が認められた一方、100μMでは枯死した。これらの結果を踏まえ、1ppmのCd処理を施した植物体よりmRNAを調製してcDNAを合成し、酵母発現ベクターに連結してcDNAライブラリーを作製した。Cd制限濃度でも生育できるCd耐性形質転換体をスクリーニングし、最終的に19個のCd耐性をもつ形質転換体を得た。これらのクローンに含まれるcDNAは、それぞれアラビドプシスのファイトケラチンシンターゼ(PCS1)とアミノ酸配列で約95%の、メタロチオネイン・タイプ3(MT3)と約90%の、動原体タンパク質であるSKP1と86〜91%の相同性を示した。次年度は、単離した遺伝子が出芽酵母のCd耐性能を高めるのにどの程度影響を与えているか、またそのほかの重金属に対する耐性能はどの様になるのかを検討し、さらに高発現の発現系に再構築して組換え型タンパク質を大量生産させ、重金属との結合様式などを明らかにしていく予定である。
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