GGA反復配列は特異な構造特性を示す。すなわち、2本鎖でありながら1本鎖特異的DNA切断酵素に感受性であること、GGA反復配列を介してホモ2量体を形成すること、およびDNA-DNAペアリング複合体を形成することである。そこで、この現象がクロマチンレベルでも生じるかどうかを調べるため、再構成クロマチンを用い、ゲノム中の局在性やDNA-DNA複合体形成における配列特異性について解析し、反復配列の構造と機能に関する検討を行った。 反復配列(GGA/TCC)nを含むDNA断片をマウスゲノム中から19個単離し、ゲノム上にマッピングした結果、種々の染色体上にマップされた。我々が開発した核クロマチンをヘテロクロマチン(He)とユウクロマチン(Ee)へ分画化する方法を利用し、分離した反復配列(GGA/TCC)nを含むDNA断片のHe/Euへの分布を定量PCR法により調べた。約半数(9/19)はHe分画に多く分布し、残りはHeとEu両分画に同程度分布し、調べたものの中にはEu分画に多く分布するものはなかった。各々のクローン化DNAを鋳型に約160塩基長の標識及び非標識DNA断片を調製し、両者を加温することによりDNA-DNA複合体が形成するか否かをゲル移動度シフトアッセイ法およびDNase I保護マッピング法により調べた。標識したDNAは同種の非標識DNAと特異的にDNA-DNA複合体が形成され、その複合体形成は配列特異性を示した。この配列依存性は、GGAリピートの反復回数に依存し、またGGAリピート近傍の配列依存性があることが、合成DNAを用いた再構成クロマチンの解析からも確認された。これらのことから、グアニンに富む反復配列を介したDNA対合が、クロマチン高次構造形成の動的基盤を形成し、これがヘテロクロマチン化や遺伝子発現等に関与する可能性が示唆される。
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