研究概要 |
GGA反復配列が特異な構造特性を示す。すなわち、2本鎖でありながら1本鎖特異的DNA切断酵素に感受性であること、GGA反復配列を介してホモ2量体を形成すること,分子間3本鎖構造を形成すること,およびDNA-DNAペアリング複合体を形成することである。これらは、この反復配列を介して染色体間の対合を起こす可能性を示唆している。本研究は反復配列を含む染色体ドメインのクロマチン状態、その変動を解析することを目的とする。 本年度は、グアニンに富むGGAリピートを含むDNAを動物細胞発現ベクターに組み込み、ヒト培養細胞に導入したin vivo実験系において、GGAリピートのとる高次構造と転写活性への影響について解析した。SV40プロモーター下でルシフェラーゼ遺伝子(luc)を発現するベクター(pGL-2)を用い、プロモーター上流部位にGGAリピート、CAGリピートおよびグアニンに富むマウスゲノムDNA断片を組み込んだ種々のプラスミドDNAを作製した。これら反復配列がプロモーター活性にどのような影響を与えるかを調べるため、それぞれの反復配列を含むプラスミドDNAと内部対照としてのbeta-gal発現ベクターとをヒトHela細胞に同時導入し、24時間後に細胞抽出液を調製し、luc活性およびb-gal活性を調べた。その結果、これら反復配列の存在によりluc活性がGGAリピート、G5およびCAGリピートで対照ベクターに対してそれぞれ2.5、7および1.5倍程度増強した。この転写活性の変化が、DNAの高次構造とどのような関連性があるかを調べるため、分離した核をDNase Iおよびマイクロコッカルヌクレアーゼ処理し、プロモター領域や反復配列近傍のDNA高次構造を解析中である。一方、GGAリピートのヘテロ/ユウ・クロマチンへの分布と、核マトリックスとの局在の関連性を調べた。分離核を制限酵素SacIで処理しのち、遠心分離し、沈殿画分から核マトリックス付着DNA、上清から非マトリックス付着DNAを調製した。PCRによる増幅から、ヘテロクロマチンに分布する9クローンが核マトリックス付着DNA領域に優位に存在する結果が得られた。一方、ヘテロクロマチンとユウクロマチンに同じ程度分布した6クローンは、核マトリックス付着および非付着DNAに同程度に分布した。以上の結果は、GGAリピートのヘテロクロマチンへの分布と核マトリックスへの局在性に関連性があることを示唆している。
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