免疫抑制剤であるサイクロスポリンAやFK506はセリン・スレオニン脱リン酸化酵素であるカルシニューリンの酵素活性を抑制する。従来カルシニューリンの抑制のみがサイクロスポリンAやFK506の作用機序と考えられてきたがが、我々はT細胞受容体とCD28を介して活性化されるMAPキナーゼファミリーのJNKやp38の活性化もサイクロスポリンAやFK506によって抑制されることを見いだし、T細胞活性化に特異的なJNKやp38の活性化経路がサイクロスポリンAやFK506の第2の標的であることを示唆する結果を得た。そこで、この経路の分子的基盤を明らかにするために、カルシニューリンの活性化経路を恒常的に活性化し、JNKやp38の活性化経路のみを検討できる系の開発した。カルシニューリンの基質でありかつT細胞活性化の最終標的遺伝子の一つであるインターロイキン2(IL-2)の転写に必須のNF-ATタンパク質の恒常活性型変異体を作製したところ、変異体は恒常的に核内にとどまり、さらに転写活性も持つことが明らかになった。恒常活性型NF-ATを発現するT細胞に刺激を与えてIL-2プロモーターの活性化を検討したところ、やはりサイクロスポリンAやFK506がJNKやp38の活性化ならびにIL-2プロモーターの活性化を阻害することが明らかになった。これらの実験結果はカルシニューリン/NF-AT経路とは独立にサイクロスポリンAやFK506の標的が存在することを強く示す。この方法を応用することによって、カルシニューリン以外の標的の阻害によってのみプロモーター活性が抑制されるアッセイ系が樹立された。このアッセイ系を利用することによって、現在さらに第2の標的を同定すべく検討を重ねている。
|