一昨年の東海村の核事故の後、敦賀湾において大規模核事故にて、避難民が生じた場合を想定して、兵庫県内の医療施設の対応力について限定的な調査を実施した。その結果、様々な問題点が明らかとなった。 そのため、平成12年度から調査範囲を、敦賀湾からの大量難民流入の可能性のある福井県・京都府・滋賀県・岐阜県・石川県・兵庫県・愛知県・大阪府に広げ、一昨年の調査で判明した問題点についてさらに詳細な調査を実施した。調査対象は厚生省健康政策研究会調査により有床施設とされている該当地域の医療機関全て1814施設で、有効回答数は554施設であった。事故の想定としては、科学技術庁のSpeed1シミュレーションの結果を基に、敦賀市北方の原発に平成て放射性物質漏れが生じ、半径20キロ圏内の避難勧告が出たという仮定を用いた。 その結果、広域搬送を前提とすれば、限定された核事故への直接的な医学的対応力はあるとの結論を得た。但し、地域医療機関と拠点病院との連絡体制にはまだ問題点が多いことが明らかとなった。大規模避難では要医療難民の可能性があり、受け入れ側の余力との兼ね合いで避難先などの拡大や遠距離避難が必要となる。特に大規模都市災害を想定した場合、医療機関の配置政策には災害医療を視野に入れた検討が必要と考えられる。このような調整は自治体を越えた強力なネットワークが必要であり、米国のFEMAで実施しているような国家レベルでの実効のある対策が必要であり、本研究ではそのための基礎データを得ることができた。
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