平成13年度の研究目的は、膵癌細胞においてRac1蛋白によるMMP-1遺伝子転写調節に関わる転写因子を同定することであった。 1.Rac1蛋白によって調節されるMMP-1遺伝子プロモーターのcis領域の同定 持続活性型Rac1V12プラズミドと、プロモーター領域の5'側より削るdeletion constructをヒト膵癌細胞にco-transfectionし、ルシフェラーゼアッセイを行い比較検討した。その結果、-560bpと+76bpの間の遺伝子プロモーター領域に、Rac1蛋白によって調節されるcis領域が存在することが示唆された。同領域にはAP-1予想結合部位が数カ所存在する。MMP-1の基礎転写に必須とされかつ種々の刺激による転写に重要であると報告されている最近位のAP-1結合部位にPCR法によるsite-directed mutagenesisで変異を導入した。変異プロモーターと持続活性型Rac1V12プラズミドをco-transfectionし、ルシフェラーアッセイを行ったが完全に転写活性は失われなかった。したがってRac1によるMMP-1転写活性亢進に必要なcis領域は他の部位にも存在することが示唆された。 2.ゲルシフト解析 AP-1結合領域に相当するDNA配列を含む二本鎖oligo nucleotideをプローブとして標識し、Rac1V12プラズミドおよびempty vectorを遺伝子導入したヒト膵癌細胞から分離抽出した核蛋白をゲルシフト解析した。その結果AP-1のみでなく他の転写因子がRac1蛋白によるMMP-1遺伝子転写活性の亢進に関わっていることが示唆された。 3.現在さらに詳細なプロモーター領域の検討を行っている。
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