本研究は、原発性胆汁性肝硬変(PBC)の疾患特異的自己抗原と考えられるミトコンドリア内膜酵素であるPDC-E2の胆管細胞のミトコンドリアおよび小胞体への輸送動態を、シグナルペプチド分子、分子シャペロンおよびそれらの遺伝子レベルで解析した。患者さんに検体の一部を本研究に用いることを説明し承諾を得た後に採取した検体を用い、検討し以下の結果を得た。 §胆管細胞膜、ミトコンドリア内膜、細胞質に存在するPDC-E2の分子量と活性の解析 PBC症例の楔状肝生検、手術材料から得た胆管細胞の細胞膜、細胞内小器官、細胞質分画、ミトコンドリア内膜成分を材料に抗PDC-E2モノクローナル抗体を用いた免疫沈降を行い、各分画に存在するPDC-E2の分子量の差異を検討したところ、細胞膜、ミトコンドリア内膜成分には同じ分子量のPDC-E2が存在することが示された。しかし、他の分画にはPDC-E2は存在しなかった。さらにOnoらの方法に準じE2 Activity Assayを行い各分画のPDC-E2活性を測定したところ、ミトコンドリア内膜成分には活性が見られたが、膜成分には見られなかった。 §正常胆管細胞とPBC胆管細胞のPDC-E2遺伝子多型性の差異の検討 特異的プライマーを用いたRT-PCR法により正常胆管細胞とPBC胆管細胞のPDC-E2遺伝子を分離精製し、デイファレンシアル・デイスプレイ法により両者間で遺伝子多型性に差異があるか検討したが、差異を認めなかった。
|