研究概要 |
神経疾患においてアルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症など原因不明で、現在も根本的な治療法は確立されていない。社会の高齢化とともに患者数は増加しており、大きな社会問題の一つになっている。 我々の教室では、パーキンソン病のなどの神経疾患の神経細胞死がアポトーシスであることをすでに報告している。これは多くの施設で追試され現在はanti-apoptotic agentが治療法の一つとして開発されている。 また、近年アメリカを中心に、今まで治療法がなかった遺伝性代謝性疾患や癌などをターゲットに遺伝子治療が開始され、その有効性が多数報告されている。神経細胞にもadenoassociated virus vector(AAV vector)を用いて、高率に神経細胞に選択的に導入することに成功している。今回我々はこれらの経緯をふまえ、神経細胞死を制御する遺伝子をAAV vectorに組み込みその発現を制御する方法を検討している。現在は、caspase-1 dominant negative inhibitor,CuSOD,MnSOD,calbindinなどを過剰発現することにより制御する系を確立している。 我々は、すでにAAV vectorにEGFPを組み込んだ系を用いて、それをマウス線条体に定位脳手術を用いて4ul投与し、その発現を確認した。約3月間は、線条体の全域に発現し、それは神経細胞を標識するmap-2抗体とco-localizeした。今後は、上記遺伝子を過剰発現させたmouseにMPTP投与し、その神経細胞死の制御効果を検討する予定である。
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