研究課題/領域番号 |
12877113
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
竹下 彰 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30038814)
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研究分担者 |
市来 俊弘 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (80311843)
渡辺 武 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (40028684)
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キーワード | 腫瘍壊死因子 / cAMP response element binding protein / アポトーシス / dominant negative |
研究概要 |
Cyclic AMP response elemcnt(CRE)binding protein(CREB)はCyclic AMPによって活性化されるProtein kinase A(PKA)やCa^<2+>/Calmodulin dependent kinaseにより133番目のアミノ酸であるセリン残基がリン酸化されると活性化される。活性化されたCREBはプロモーター領域にCREを有する遺伝子の転写活性を上昇させる。しかし血管平滑筋細胞や血管病変形成の過程においてCREBがどのような役割を果たすかについてはほとんど知られていない。本研究の目的はDN-CREBを平滑筋細胞に過剰発現させその作用を阻害することにより、CREが平滑筋細胞の分化や増殖、血管病変形成に果たす役割を明らかにすることである。 本年度はサイトカインによる平滑筋細胞におけるCREBの活性化について検討した。CREBの活性化は133番目のセリンのリン酸化を認識する抗体を用いたウエスタンブロットによって行った。腫瘍壊死因子(Tumor necrosis factor : TNF)はCREBのリン酸化を誘導した。またCREを含むルシフェレースベクターを用いて、検討したところTNFはCRE依存性の遺伝子発現を促進した。阻害剤を用いた実験より、CREBのリン酸化にはp38mitogen-activated protein kinaseが関与していることが明かとなった。 Dominant Negative(DN)-CREBの過剰発現は培養平滑筋細胞にアポトーシスを誘導した。これは抗アポトーシス分子であるBcl2の発現低下によるものと考えられた。ラット頸動脈をバルーン傷害すると新生内膜から形成される。CREBは主に新生内膜の平滑筋細胞に発現しリン酸化も亢進していた。この傷害血管にアデノウイルスを用いてDN-CREBを発現させると、新生内膜の形成が約40%抑制された。この際BrdUの取込みの低下や、アポトーシスの増加が観察された。以上の結果より、CREBが血管平滑筋細胞の増殖や肥大、アポトーシスなどを制御し、動脈硬化などの血管病変の形成に重要な役割をはたすことが明かとなった。
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