リポイド過形成症は日本人に比較的多く発症し、先天性副腎過形成症の約5%を占める疾患である。本症は、臨床的、内分泌学的にコレステロールからプレグネノロン合成過程の異常により発症すると推測されている。その責任遺伝子の一つとしてStAR遺伝子が同定されているが、我々は、本症患者を対象としてStAR遺伝子解析を行い、様々な遺伝子異常の同定、またその病態の特徴を明らかにしてきた。その結果、StAR遺伝子異常により発症する症列は約75%程度であり、残り15%の症例はStAP遺伝子異常によらないことを明らかにしてきた。今回StAR遺伝子異常が同定されない症例を対象にコレステロール側鎖切断酵素(P450scc)遺伝子を解析し、P450scc異常症を同定しうるか否か検討した。 5例の解析対象のうち典型例のStAR異常症とは病態が異なり、外性器異常も不完全で、また副腎発症も4歳頃と遅れている4歳女児例にP450scc異常を世界で初めて遺伝子異常を同定した。遺伝子変異はP450scc遺伝子の第4エクソンに6baseの挿入を起こし、Gly Aspの2つのアミノ酸を付加する変異であった。この変異は両親には認められず、De novo変異であった。COS-1細胞を使った機能解析にてP450scc活性を失う変異であった。P450scc異常症を同定したことから、リポイド過形成症の病因、病態の多様性が示唆された。今後同様な症例の蓄積により、StAR異常症との差異が明らかにされてくることが期待される。
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