ジストロフィンmRNA前駆体のスプライシングに関与する未知の核内タンパクが存在するとの説が提唱され注目されている。しかし、ジストロフィンのスプライシングを特異的に制御するタンパクに関する研究はなく、ジストロフィン異常症研究の未開拓領域として残されたままで、先の説も証明されていない。本研究は、ジストロフィンのスプライシングに関与する核タンパクを世界に先駆けてクローニングするものである。 先に私たちはジストロフィン遺伝子のエクソン19の配列内にスプライシング促進配列があり、この配列がスプライシングを制御していることを明らかにしてきた。その制御にはこのスプライシング促進配列に結合するタンパクが大きく関与していることが疑われたので、RNA結合タンパクの精製とその遺伝子のクローニングを行った。スプライシング促進配列からなるFITCでラベルしたRNAを合成し、これに結合する核タンパクをまず精製した。HeLa細胞核抽出液をアニオン交換カラムカラムと逆相カラムにかけスプライシング促進配列に結合するタンパクをアクリルアミド電気泳動上単一のバンドまで精製した。そして、精製した蛋白をマススペクトメトリー解析したが、そのスペクトルパターンに該当するタンパクをコードしている遺伝子は発見されなかった。 そこで、先に精製したタンパクをトリプシン処理して断片化した後、それぞれの断片のアミノ酸配列をペプチドシークエンサーで解析した。その結果、精製したタンパクの一部のアミノ酸配列を明らかにすることに成功した。この1部のアミノ酸配列はデータベース内の遺伝子によりコードされているタンパクの一部の配列であり、RNA結合タンパクのクローニングに成功した。現在明らかになったcDNA配列をもとにタンパクを発現させ、その機能を解析すべく準備を進めている。
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