発達期におけるmicrogliaの移動・分布様式、他のgliaとの関連については不明な点が多い。いっぽう我々はadultラットでは、actinのmodulatorとして知られるThymosinβ4(tβ4)に対するあたらしい抗体がmicrogliaを選択的に染めることを既に確認している。そこで新生仔ラットにおいてtβ4抗体を用い、microgliaについてまず、定量的解析をおこなった。P0、P3、P11、P28、P60(n=4)の正常Wister ratをパラフォルムアルデヒド液にて潅流固定し、大脳前額断凍結切片を作成。抗体(anti-rat tβ4 rabbit IgG;1:15000;4℃、24hr反応させ、免疫組織化学的に検討した。Parietal Cortexにおいて、皮質全層(All)と、Pial surface(Pi;軟膜に接着する細胞)、Molecular layer(M)、Outer Cortex(Co)、Inner Cortex(Ci)毎にtβ4陽性microgliaを数え、それぞれの部位における細胞密度を算出した。さらにIsolectinB4、GFAP、VimentinO9等との蛍光二重染色、propidium iodide染色による核分裂観察も共焦点顕微鏡にて行った。その結果、細胞密度はP0からP3にかけては変化に乏しかったが、P3からP11にかけて、Allは約4倍、M、Co、Ciで約2〜9倍の増加を認めた。P11からP28には、All、Co、Ciで低下したが、Mの変化はなかった。P28からP60にかけてはAllでは低下したが、各部位毎では変化しなかった。各々の日齢ではP0、P3でPi+MがMより有意差を持って大きかったが、P11以降その差は有意差を持たず、軟膜接着細胞の比率減少が推測された。tβ4はP28以降のmicrogliaの染色性においてIsolectinB4より優れていた。P0、P3で明瞭に認められた、VimentinO9陽性のradial fiberはP11では皮質内では殆ど消失した。GFAP、VimentinO9と二重染色される細胞は認めなかった。日齢とともに増加する核分裂像を、皮質内で白質よりも高頻度に認めた。 これらの結果から、tβ4が幼弱なmicrogliaをIsolectinB4に比しより明瞭に染色すること、またP0からP3にかけて多数認められた軟膜接着細胞の比率がP11までに減少することから、その間に軟膜側からの細胞移動が活発に行われることが示唆された。
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