研究概要 |
Corticotropin-releasing hormone(CRH)は、海馬・扁桃体-室傍核系におけるてんかん発作惹起のkey factorとしても脚光を浴びているが、CRHについて発達期の脳と痙攣発作に焦点を当てた研究はない。臨床的にも、adrenocorticotrophic hormone(ACTH)やグルココルチコイドが、West syndrome(点頭てんかん)等の年齢依存性難治性てんかんの第一選択薬剤として使用されているのが、ACTHやグルココルチコイドの作用機序も明らかにされていない。今後、年齢依存性のてんかんの病態の解明や治療法の開発のためのkey factorとなるCRHの動態を、他の神経伝達物質(特に、セロトニン-キヌレニン系)との関連も含めて、解明するのが本研究の目的である。 12年度は、成熟マウス脳内CRH含有ニューロンの分布を免疫組織化学を用いて検索した。 Catherineらの(Endocrinology,2547-2555.1994)の報告では、in situ hybridazation法によって成熟マウス小脳でのCRFmRNAの発現は認められてはいない。しかし、Yamanoらの(Neuroscience Research,387-396.1994)の報告では、成熟マウスにおいて小脳皮質の登上線維に、CRF-like immunoreactive fiber(CRF-IR)が多数認められた。一方、本研究では、小脳皮質全体、皮質下の核にもCRF-IRが多数認められ、Yamanoらの報告と一致する所見であった。Catherineらの報告と本研究の結果は全体的にはほぼ一致しているが、CRF-IR細胞・線維について以下の点で異なった。 1)Stratum subependymale ventriculi olfactoriiに強く認められる。 2)大脳皮質で細胞体が多く認められる。 3)Nuc.accumbensで細胞体が認められる。 4)Substantia nigraやRapheではCRF-IRは認められない。 5)小脳で多くの顆粒状の細胞が認められた。 今後、ラットとの相違を検討し、セロトニン-キヌレニン系との関連も含めて研究を進めめたい。
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