1)VZV回収実験:VZVウイルス液(12000PFU、7000万コピー数/1vial)を超音波ネブライザーで噴霧し、2cm、50cm、150cm、250cmの距離から2-5分、10分、15分の採取時間でサンプリングしウイルス分離とウイルスコピー数を検討した。ウイルス分離は噴霧口に近接した2cmのサンプルだけから感染性VZVを回収することが確認でき他の3箇所からは分離できなかった。各距離におけるウイルスコピー数(/20cm^2)は2000-10000、100-500、100-550、1-170であった。検体採取時間とコピー数は相関傾向を認め得なかった。今回の検討ではVZV感染症の強い感染力をウイルス分離で証明できなかったが飛沫核の到達距離である150cmと250cmのサンプル中に1-550コピー数のVZVが到達していることを確認できた。ウイルス分離を指標とする検討には凍結乾燥したVZV試料作成、噴霧法、サンプリング法などの改善や検討が次の課題になる。 2)VZV初感染、ACV使用時期とVZV散布の検討:水痘発症24時間以内とそれ以降にACVを投与した2つの群の間で患児の居住する部屋のエアサンプル中のVZV DNAをPCR法で経時的に検討した。その結果24時間以内にACV治療を開始できた群ではウイルス散布の範囲、期間の程度が少ない傾向が認められた。 3)帯状疱疹患者からのVZV散布とそのコントロールに関する検討:帯状疱疹患者が入院した際に水痘と同様、病室のエアサンプルを採取しVZV DNAをPCR法で経時的に検討した。その結果、水痘同様、帯状庖疹患者からも広範かつ長期にわたるウイルス撒布が確認できた。次に躯幹部に皮疹を生じた患者を対象に皮疹をデュオアクティブで完全に被覆した群と被覆しない群の2群に分けウイルス撒布を検討した。その結果、完全に被覆した群ではエアサンプルにVZV DNAが認められなかった。このことは帯状疱疹患者では主たるウイルス排出部位が皮疹であることを示している。 以上のことから水痘では可能な限り早期にACV治療を開始すること、ならびに帯状疱疹ではACVによる治療とともに皮疹部を被覆剤で覆うこと、などがウイルス拡散を抑え院内流行の防止につながることが示された。
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