ドリフトチェンバーは荷電粒子の飛跡検出器として知られているが、低エネルギーのγ線検出器として比較的安価に製作することも可能である。一方、γ線源のうち密封された測定器用チェッキングソースと呼ばれるものは、3.7MBq以下の割合で崩壊しており、強度が低いため取り扱いは技術的にも法的にも比較的容易である。両者を組み合わせるとドリフトチェンバーでγ線の数を数えることができる。γ線源とチェンバーの間に物質が有ると幾つかのγ線は物質に吸収されるが残りはチェンバーに到達するので、その数から物質量を推定することができる。この原理を利用して、従来X線撮影で写真の陰影濃淡判別を行っていたものをγ線の数の変化に置き換えて判別できれば、患者の放射線被爆量を飛躍的に少なくすることが出来ると期待される。 上記のことに沿って基礎的データを得るのが本研究の目的である。これまでにγ線検出用小型チェンバーを試作し、幾つかのγ線チェッキングソースを使ってγ線エネルギーと物質透過度との関係を調べた。現時点で言えることは次のようなことである。 (1)6keV程度の低いエネルギーのγ線を使えば植物の葉の模様を捉え得る。 (2)30keVや660keVのエネルギーであると、それぞれアルミやステンレスパイプの直径と肉厚を10%程度の誤差で求めることができる。 今後はこれらのデータを効率よく得ること、また、結果を分かり易く表現すること等を中心に研究を進める。
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