研究概要 |
ES細胞から骨髄造血幹細胞までのIn vitroにおける発生・分化過程の再現とともに重要なことは造血幹細胞を複製・増殖させる技術の開発である。我々はNotchシグナルが幹細胞の未熟性を維持する可能性について検討を行った。ES細胞にエレクトロポレーション法を用いて活性化型Notch1を導入し、上記と同様にメチルセルロース中で培養を行った。その結果、embryoid bodyから形成されるseconday colonyは、再度メチルセルロース中で培養することによりthird colony,fourth colonyを形成した。このことは活性化型Notch1発現ES細胞は未熟性を維持できることを示している。さらに、我々は活性化型Notch1による未熟性の維持過程がどのような転写因子を介しているかについて検討を行った。myeloid系に関わる転写因子としてC/EBPα,C/EBPε,PU.1,AML1b,c-myb,GATA-2について、erythroid系に関わる転写因子としてSCL,GATA-1,GATA-2,NFE2(p45),MafK(p18),EKLF,c-mybについて、分化刺激の前後での遺伝子発現を比較した。その結果、GATA-2の発現が維持されていることから、Notch1による未熟性の維持が、GATA-2を介している可能性が示唆された。以上より、GATA-2の発現の維持がNotchシグナルによる造血幹細胞の複製・増殖に必須であると考えられた。今後は、NotchリガンドとRAS/MAPKシグナル活性化リガンドの両方のシグナル伝達系を同時に稼働させ、未熟性を維持するとともに造血幹細胞を複製・増殖させる方法論の確立を試みる予定である。
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