1.上皮性ナトリウムチャンネル(ENaC)のβサブユニットの日本入における遺伝子多型の決定 : 12エクソンすべてのスクリーニングを終了した。その結果、日本人では8個の遺伝子多型が存在し、そのうち7個は白色人種にも黒色人種にも報告されていない日本人特異的なものであった。2.多型の詳細 : 3個はアミノ酸配列を変えており、5個はアミノ酸配列に影響のないものであった。アミノ酸配列を変える多型の位置と頻度は以下のごとくである。P369H(1/1225)、V434M(5/1225)、P592S(5/1225)。アミノ酸変異のない多型は以下の位置に認められた。Tyr335、Pro407、Asp419、Ser520、Thr594。3.高血圧症との関連:アミノ酸配列を変える多型、P369H、V434M、P592Sにおいては大型コンピュータを用いて、そのフェノタイプを解析し、本態性高血圧症との関連を検討した。その結果、P369Hが認められた1症例は高血圧であったが、その頻度があまりに低いことより、この多型の日本人の本態性高血圧症への影響は極めて小さいと考えられた。V434Mでは5例中3例が高血圧症であったが、統計学上、有意の高頻度とは結論づけられなかった。P592Sでは5例中1例のみが高血圧症であった。従って、上皮性ナトリウムチャンネル(ENaC)のβサブユニットの遺伝子多型は日本人の本態性高血圧症との有意の関連は認められなかった。しかし、V434Mではいずれの症例も軽度に血清ナトリウム値が上昇しており、この多型が生理的に影響を及ぼす可能性が示唆された。結論:日本人ではENaCβサブユニットに他民族とは異なった特異的な遺伝子多型が存在するが、本態性高血圧症に及ぼす影響はほとんどないと考えられた。
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