研究概要 |
ビタミンDの新しい作用とその作用機構を解析し、新規の細胞内情報伝達系を明らかにすることを目的に、ビタミンD受容体ノックアウトマウスを用いて研究を行った。 まず、本マウスには24水酸化酵素活性はほぼ欠損した状態にあるので、外因性に投与された24,25dihydroxyvitaminDの作用を解析するには最適の状態である。そこで、離乳直後のマウスに24,25-dihydroxyvitaminDを大量に投与し、骨・カルシウム・リンの状態を観察した。しかし、24,25dihydroxyvitaminDの大量の投与にもかかわらず以前Hypでは骨代謝を改善することのできた量であっても、KOマウスのカルシウム・リンには何ら変化を認めず、骨形態計測でも明らかな改善は認められなかった。このことから、24,25dihydroxyvitaminDの情報もビタミンD受容体を介して発現していることが明らかとなった。 一方、ビタミンD受容体KOでは卵巣のエストロゲン産生低下が生じる。そこで、この異常とビタミンD受容機構の関係を更に解析するために、エストロゲン産生のキーエンザイムであるアロマターゼ遺伝子発現を卵巣、精巣で検討した。この結果、両性においてビタミンDはアロマターゼ遺伝子の発現に必須であり、カルシウムの低下による二次的な変化でないことが明らかになった。この成果により、ビタミンDによって直接調節される遺伝子が新しく同定されたことになる。また、本年は骨代謝におけるマスター遺伝子とも言えるcbfa1の発現がビタミンDによって負に調節されていることを明らかにしており、今後これらの調節の分子機構を明らかにする予定である。
|