1)膵導管におけるアクチビンの発現の検討 膵幹細胞の存在すると思われる膵導管細胞における分化誘導因子アクチビンの発現を検討した。アクチビンβAサブユニットおよびβBサブユニットは膵導管に発現していた。その発現は膵部分切除やストレプトゾトシン投与後に増加し、膵再生と密接な関係にあるものと考えられた。アクチビンは膵腺房内に存在する介在部導管細胞にも発現していた。 2)膵内分泌前駆細胞の培養 つぎに膵腺房を採取し、それを低濃度血清存在下に培養した。やがて腺房細胞は死滅し、わずかではあるが小型の形態学的に上皮細胞と思われる細胞群が得られた。これらの細胞は膵導管細胞のマーカーであるサイトケラチン陽性で、またアクチビンのβAサブユニットおよびβBサブユニットのmRNAを発現していた。これらの結果から、この小型細胞は膵腺房内に存在する介在部導管細胞であると考えられた。この介在部導管細胞は膵内分泌腺のマーカーとなる蛋白を発現してはいなかった。しかし分化誘導因子アクチビンとベータセルリンの存在下に培養を行うと、インスリンを産生する細胞へと分化した。したがってこの系を用いることによって導管細胞からインスリン産生細胞への分化過程を解析することが可能であると思われる。
|