研究概要 |
現在広く臨床応用されている超音波波動メスは、切開と凝固のバランスが最もよくとれた機器で、生体組織に対する基本的な機序は組織蛋白の変性凝固作用である。本研究では、この超音波波動メスの蛋白凝固作用を応用した非縫合消化管吻合モデルの作成を目的としている。本年度は全身麻酔下にブタの小腸を用いて、小腸に小切開を加えた後に、同部位の溶接的閉鎖をさまざまな条件下で超音波波動メスを用いて行った。この操作で得られた吻合部は全て気密性が保たれており、耐圧試験が可能であった。すなわち超音波波動メスの設定パラメタを変えながら、特定の条件下で得られた切開閉鎖部の強度を耐圧試験を施行して比較計測した。具体的には、切開閉鎖部を含めた4〜5cmの腸管を摘出し、水浸下に両端を閉鎖した腸管にinjectorを用いて一定の速度で空気を注入し、吻合部が破綻した時点の圧をbursting pressureとして記録し吻合強度の指標とした。この実験により、吻合部の強度が最強になるような腸管吻合における超音波波動メスの適正設定条件(mode,power,blade)を探索した。吻合技術の標準化を図るfirst stepと考えている。その結果、とくに出力により吻合強度が大きく異なることが判明した。現在、吻合部の組織学的な検討も行っており、この結果を踏まえて全周縫合モデルの作成に取り組む予定である。
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