研究概要 |
BALB/Cマウスにグラム陽性加熱死菌P.acnesを注射後,エンドトキシン(LPS)を注入することにより劇症肝炎モデルを作成した。このモデルは,P.acnesによりリンパ球が活性化され,さらにLPSによりIL-12,IL-1,IFN-γ等の炎症性サイトカインが著明に産生され劇的な急性肝障害が惹起され死亡するものである。この発生機序は,LPS刺激により活性化した転写因子NFκBが細胞質内から核内に移行しDNAと結合することにより,種々のサイトカインを発現させ高サイトカイン血症によるショックを引き起こすことによる。このNFκBの結合するDNA配列に似せ作成した型核酸(デコイ)をHVJ-liposome法により肝臓に導入することにより,急性肝不全が予防可能か否かを検討した。尚,対照群では,同方法で生食を注入した。本年度は,(1)HVJ-liposome法により導入されたNFκBの肝内分布(2)炎症性サイトカインに対する作用を検討した。肝内分布の検討では,経脾経門脈的に蛍光色素(FITC)でラベルした核酸をHVJ-liposomeに包埋し注入した結果,クッパー細胞を中心とする非実質細胞に多くの集積が確認された。(2)血清中炎症性サイトカインの測定結果では,デコイ注入群では対照群に比しIL-12およびIL-18が有意(p<0.01)に抑制される結果が得られた。またデコイ注入群では,肝組織内の炎症細胞浸潤および肝細胞壊死が著明に抑制され,致死的な急性肝障害からの離脱が図られたと考えられた。 現在エルトレーターにてクッパー細胞の分離・培養し,これらを用いてゲルシフトアッセイを行なっている。このアッセイで実際にクッパー細胞でNFκBが抑制されているのかを検討中である。
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