近年、カテーテル、塞栓材料、放射線珍断機器等の発達により、脳神経外科領域における血管内手術が飛躍的に進歩してきた。難治性の脳・脊髄動静脈奇形に対しても、nidus塞栓術の技術が進み、開頭術や定位的放射線治療の前処置ばかりでなく、根治術も可能となってきている。しかし、不完全な塞栓術後、血管の再疎通が起こることが知られており、最近の研究では、時間の経過とともにnidus内の塞栓物質の中に血管新生が生じてくることが明らかになってきた。しかし、脳・脊髄動静脈奇形塞栓術後の血管新生について、その制御を目的とした研究はほとんどなされておらず、塞栓物質と血管新生の関係については明らかにされていない。そこで、本研究では、液体塞栓物質が血管内皮にどのような影響を及ぼすか組織学的に検討した。液体塞栓物質としてはethylene vinyl alcohol copolymer(EVAL)のDMSO溶液を用いた。ラット総頚動脈を結紮してできた盲端部分にEVAL溶液を注入し、2週間後に同部の摘出し標本とした。その結果、EVALの5%溶液では、血管内皮への影響はほとんど見られなかった。一方、10%溶液では、内膜と塞栓物質の癒合、内膜への線維芽細胞の浸潤、軽度のフィブリノイド変性のなごりによると思われる浮腫、など種々の変化が認められた。以上の如く、液体塞栓物質であるEVALは内皮細胞に対し組織学的変化をもたらし、その変化は濃度により異なることが分かった。今後は、血管新生との関連を検討し、より安全かつ効果的な塞栓術を開発する必要がある。
|