研究概要 |
臨床的にprimary glioblastomaと診断した55例のうち,65歳以上の32例の腫瘍組織よりDNAを抽出し,JCV,EBV,SV40に特異的なDNA配列をプライマーとしてPCRを行い,ウィルス遺伝子の存在の有無を解析した.コントロールとして非腫瘍脳組織10例,10例の健常者リンパ球について同様の解析を行った.32例中3例よりSV40の早期遺伝子を検出したが,JCV,EBVは全く検出されなかった.検出されたSV40早期遺伝子は,SV40野生型と同一であった.SV40T抗原は免疫組織学的には検出されなかったが,in situハイブリダイゼーションにて,腫瘍組織の細胞質内に検出された.3例は,いずれもp53遺伝子異常を認めない症例で,腫瘍の主座は基底核にあった.コントロールの非腫瘍脳組織,リンパ球からはいずれのウィルスも検出されなかった.基底核の神経細胞や星状膠細胞にウィルスが親和性を有している可能性が考えられた.あるいは,基底核部の虚血性変化に伴う組織修復帰転が,潜在感染しているウィルスの再活性化に関与していることが考えられた.
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