DNAウイルスは増殖抑制蛋白質を制御して、正常細胞を腫瘍化することができる。最近上衣腫、脈絡叢乳頭腫などの60%にSV40のDNAが検出されることが報告されている。本研究では脳腫瘍細胞におけるSV40 DNAの発現を検出した。 PCR法では膠芽腫32例中の3例でSV40 DNAが検出されたが、4例の上衣腫および5例の髄芽腫では検出されなかった。検出された3例でDNA塩基配列を決定したところ、SV40のregulatory regionであることが判明した。この3例は高齢でp53が野生型であることからde novo glioblastomaと考えられた。免疫組織化学ではSV40 T抗原は陽性染色されなかったが、in situ hybridizationでSV40 T抗原のmRNAは認められた。これらの結果より、高齢者においてはSV40の不顕性感染が一部の膠芽腫の腫瘍化に関与している可能性が考えられた。
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