研究概要 |
幼若家兎の膝関節から滑膜細胞を単離し、エレクトロポレーション法によってgreen fluorcsccnt protein(GFP)遺伝子およびTGF-β1遺伝子を導入した(導入効率は5%)。このTGF-β1遺伝子導入滑膜細胞をコラーゲンゲル(セルマトリックス)に包埋し(1x10^6個/ml)、10%FCS添加DMEM培地で4週間培養し、家兎膝関節の大腿骨顆部に作製した直径4mmの関節軟骨全層欠損部に移植し、骨膜パッチで表面を被った。術後52週まで観察を行っているが、移植組織中にII型コラーゲン、アグリカンを認め、細胞外基質のメタクロマジーを認めた(学会・論文発表準備中)。 また、軟骨細胞と滑膜細胞を共同培養したところ、軟骨細胞と滑膜細胞の直接的な接触により、滑膜細胞の軟骨細胞への形質転換(滑膜細胞のS-100蛋白産生)が生じること、滑膜細胞が軟骨細胞様形態に変化すること、滑膜細胞の遊走速度(約15μm/h)が低下し、軟骨細胞のそれ(約7μm/h)に近づくことなどを明らかにした(平成14年日本整形外科学会基礎学術集会、2003年のInternational Society of Arthroscopy, Knee Surgery and Orthopaedic Sports Medicineで発表)。 さらに、コラーゲンゲル包埋滑膜細胞に外因性にTGF-β1を投与すると(1,10,100ng/ml)、いずれの濃度においても滑膜細胞の遊走速度を約1.5-2.0倍に促進した。移植組織中においても、コラーゲンゲルに包埋したTGF-β1遺伝子導入滑膜細胞がより早い組織のリモデリングを示したことから、TGF-β1が、細胞増殖や基質産生のみならず、細胞の移動・組織のリモデリングにも影響を及ぼすことが明らかになった。
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