研究課題/領域番号 |
12877238
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
稲葉 英夫 金沢大学, 医学部, 教授 (60159952)
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研究分担者 |
谷口 巧 金沢大学, 医学部・附属病院, 講師 (30301196)
後藤 由和 金沢大学, 医学部, 助手 (60282167)
柴田 恵三 金沢大学, 医学部, 助教授 (70178903)
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キーワード | ischemic preconditioning / PEEP / 虚血再灌流障害 / 肝臓 / 消化管 / 腎臓 |
研究概要 |
ischemic preconditioningの誘導は、虚血再灌流障害による臓器障害を軽減しうる有力な手法として注目されている。ischemic preconditioningは、生体を構成するほぼ総ての重要臓器において報告されている。ischemic preconditioningには、虚血情報シグナルとしての一酸化窒素、アデノシン、bradykinin、calcitonin gene-related peptide(CGRP)、情報増幅器としてのprotein kinase C(PKC)、効果器としてのK(ATP) channel、熱ショック蛋白、抗オキシダント酵素が関与することが明らかにされている。PEEP(Positive End-expiratory Pressure)は、健常生体に様々な変化をもたらすことが明らかになっている。PEEPの生理学的作用の中には、胸腔内圧増加による静脈灌流減少を伴った心拍出量減少による臓器のうっ血・虚血、ischemic preconditioningの虚血情報シグナルであるbradykinin、CGRPの産生増加が含まれている。本研究は、臓器うっ血・虚血をもたらす高いPEEP負荷(15-20cmH_2O)は、生体内臓器(特に肺、肝、消化管、腎)に対する、単純な血流遮断よりも効果的で実用的なischemic preconditioningの誘導法になるとの仮説を証明することを目的とした。これまでの研究期間にPEEPによる肺、肝、消化管、腎に対するischemic preconditioningの誘導の証明を試みた。静脈麻酔(pentobarbital)下にラットに人工呼吸を行った。10分間の持続陽圧換気(PEEP値15,25cmH_2O)と5分間の間欠的陽圧換気(PEEP値0cmH_2O)を3回繰り返した。その後、大動脈を上腸間膜動脈下部で遮断し、肝、消化器(上腸間膜動脈支配領域)、腎に対し虚血を負荷した。各臓器障害度は各臓器の組織学的変化に加え、客観性の高い指標を用いて定量した(肝:GOT、LDH;消化管:LDH;腎:血清クレアチニン)。 これまでの研究結果は、15cmH_2OのPEEPを負荷した群においては、対象群に比し、虚血後の血清クレアチニンの上昇がわずかに抑制されることを示している。誘導の最適条件を明らかににする研究を継続中であり、また、他の臓器に対しも、PEEPはischemic preconditioningを誘導するかを検討中である。
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