研究概要 |
多くの腫瘍で癌抑制遺伝子p53の異常が起きていることが知られている.P53の機能は遺伝子に障害を受けた細胞の増殖を一時停止し,その修復を促すことと,修復不可能な場合には細胞にアポトーシスを誘導することである.泌尿器科癌,特に膀胱癌ではp53遺伝子の異常が数多く報告されている.本研究では,膀胱癌由来の培養細胞株を用いて変異型p53分子を発現している細胞に対し機能性ペプチドを用いてp53の機能回復が可能か否か検討する事を目的としている.本年度の研究では以下のことが明らかになった. 機能性ペプチドの作成:p53分子のC末端のコアドメインの抑制を解除のためにp53分子のC末端と同一の配列を持つペプチを作成した.(ペプチド46,アミノ酸残基361-382に相当する).さらに,その細胞内移行を可能とするために,細胞膜貫通能をもつアミノ酸配列,すなわちアンテナペディアアミノ酸配列を組み込んだ. 精製p53蛋白での作用の検討:次に精製p53と上記のごとく作成したペプチドの作用を検討した.p53分子上でDNA結合部位に相当する部分に変異を持つp53蛋白(R273H)にこのペプチドを作用させたところp53蛋白の活性化が見られた.(DNA結合能の回復を指標として検討した). 以上のことから,現在,p53に変異を持つ泌尿器科癌培養細胞株,SCaBER,HT1376,KRC/Yについて上述ペプチドの細胞内移行を検討中である.
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