研究概要 |
血液脳関門(BBB)と内側血液網膜関門(inner BRB)は,血管透過性が極めて低く,非常に類似した構造を持ち、調節にも同様な分子機構が働いていると推測される。そこでラットの網膜におけるGDNF、NTN及びそれらのレセプターについて、局在を検討し,ブタ大脳皮質毛細血管内皮細胞(PBEC)を用いて,GDNFとneurturin(NTN)の作用を調べた. [結果] 1.ラット網膜の免疫組織化学 Glial fibrillary acidic protein(GFAP)は、グリア細胞系に特異的に発現する.GDNFとNTNはGFAP陽性細胞に検出され,GDNFとNTNのレセプターであるGFRα-1、GFRα-2は,網膜の毛細血管内皮細胞上に認められた. 2.NTNとPBECのバリアー機能 1)CPT-cAMP及びphosphodiesterase inhibitor(PDE-I)添加群、 2)CPT-cAMP及びPDE-Iの存在下で10ng/mlのNTN添加群、 3)10ng/mlのNTN添加群、 4)対照群の4群について、transendothelial electric resistance(TER)を測定した。TERは,高いほど血管透過性が低いことを示す.対照群及びNTN単独添加群でTERは変化せず,TERは,CPT-cAMP及びPDE-I添加群で有意な上昇を示し、CPT-cAMP、PDE-I、NTN添加群ではさらに有意に上昇した。 [考察]糖尿病網膜症をはじめ眼疾患の多くは、inner BRBの破綻し,血管透過性が上昇していることが多い.今回の結果から、GDNFとNTNが脳血管内皮細胞のバリアー機能を高め、網膜のinner BRBを増強することが示され,糖尿病網膜症の網膜浮腫、黄斑浮腫などに対する予防や治療など、臨床応用の可能性が示唆された。
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