小Maf群は、胎生中期以降の神経系細胞で広く発現する転写因子で、特にneural crestの発達分化に関与することが示唆されている。また、MafK遺伝子導入によるマウス赤白血球(MEL)細胞の赤白血球分化を報告した。今回、神経芽腫細胞へのMafK遺伝子導入による形質転換を、細胞形態・蛋白合成能・転移能の変化を検討する事により明らかにした。すなわち、細胞分化と悪性度の相関を観察した。 神経芽腫は、その転移部位・形式により、予後が大きく左右される。すなわち、乳児神経芽腫が肝に転移し予後良好である一方、年長児は骨・リンパ節に転移し予後不良である。この興味深い年齢・転移臓器に伴う予後変化は現在、研究の中心となっている。本研究では、神経系分化転写因子を導入し、Maf転写遺伝子が関わる分化度を変化させ、その転移標的臓器である肝での転移能を検討した。 C-1300神経芽腫にリポフェクチン法用いてMaf遺伝子を導入し、A/Jマウスに静注移植、転移実験を行った。転移臓器別のアッセイ法としては、肝ではliver colony法、で検討した。liver colony法は肝表面に結節として現れる転移観察するものである。本年度は神経芽腫細胞へのMaf遺伝子導入に着手、方法としては確立したが、transfection効率は7-9%と低く繰り返し実験で平均7.6%であった。静注移植後、肝転移を定量的に得ることができた。10^5cells移植により対象群では平均186個の肝転移出現であったが、Maf遺伝子導入群では125個と転移抑制が認められた。
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