平成13年度の目的:ラットを用いた動物実験により皮膚血管の長大化を促進するする方法の検討した。また、血管形態の変化と組織血流の動態変化の連係を、血管造影像とレーザー血流画像を比較対照して検出することに成功した。 実験1:ラット(ウィスター系、オス、250g)背部の3血管、胸背、肋間、深腸骨回旋(腸骨)の各動静脈をちょうど含むような長方形に皮膚を切開し皮弁を作成した。皮弁につながる血管(血管茎)を深腸骨回旋血管の1本のみとし、他は切断するモデル(uni-pedicle)と、胸背と深腸骨血管の2本を利用し、肋間血管を切断するモデル(bi-pedicle)を比較した。 実験2:また、uni-pedicle、bi-pedicle双方で、母床血行からの血流再開を阻害して、血行形態ならびに血行動態の変化の差異を確認した。 結果:Uni-pedicleの方が、血管の長大化が効率的であった。栄養血管からの血流は他の血行領域へ及ぶ、「血流の拡散」がおこり、「血流を代償」していた。これは、昨年の本研究での仮説(血管の変化は皮膚血流維持のための血流代償現象)を裏付ける結果となった。血管茎が1本のみのuni-pedicleの方が、2本の血管茎に依存できるbi-pedicleに比べて、代償作用が強かった。母床血流再開遮断により、皮弁組織血流は低下した。しかし、結果的に、血管の長大化には有用であった。この現象も、低下した血流を代償するための血管形態変化「血流の代償」としてとらえられた。
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