平成14年度は皮膚・筋肉内の微細血管網を主軸化させ、それにより元々血流のない人工真皮を栄養することを目的とした。 実験方法 皮弁の作成:ウィスター系ラット(200g、8週齢)の片側肩甲部尾側に頭尾方向8cm横幅2cmの長方形の皮弁を作成した。背部正中腺から5mm外側に同皮弁を作成すると、皮弁内頭側より、胸背動静脈、肋間動静脈、深下腹壁動静脈のほぼ同程度の血管径と血行領域を持つ3本の血管径を含めることができた、このうち、中部の肋間動静脈を結紮・切断して、頭側・尾側の胸背、深腸骨回旋血管の2本を血管茎とした。皮弁外周は肉様膜まで切開して、皮弁と母床のつながりは2本の血管茎のみのbipedicled island flapを作成した。反対側背部は同一個体内のcontrol sideとした。 人工真皮の固定:表層にシリコン膜を付着したコラーゲンスポンジ製人工真皮(商品名ペルナック、発売元興和)を皮弁裏面の非上皮面に逢着した、人工真皮は皮弁よりも大きめとし、コラーゲンスポンジ面が皮弁、シリコン膜面が母床と接するようにして縫着した。これにより、母床面や皮弁断面からの皮弁への血行再開を遮断した、5日目に人工真皮付き皮弁の評価を行った。 結果 人工真皮は皮弁の裏面に生着して人工真皮・皮弁複合体を形成していた。2本の血管茎のうち胸背血管を結紮切断しても複合体は生存していた。この時点での血管造影像では、複合体内に縦貫する主軸化axializeされた血管束が観察できた。7日から14日の状態は個体差が大きく、人工真皮のシリコン膜が脱落して、複合体が母床と再癒合したものや、人工真皮面を内腔側としてロールを形成するものを認めた。この管腔構造を呈した人工真皮・皮弁複合体の血管造影でも主軸化血管束を認めた。 考察・結論 本研究では、微細血行の主軸化=長肥大化と、人工・生体組織の複合化が同時に可能であった。また、主軸化した栄養血管を持つ管腔構造形成の可能性を示唆した。
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