研究概要 |
マウス脾細胞cDNAライブラリーよりPCR法を用いてマウスCD44遺伝子およびIgG1 Fcフラグメントをコードする遺伝子を増幅した.ヒトフィブロネクチンタイプIリピート部分をコードする遺伝子断片は、ヒト末梢血cDNAライブラリーより同様に増幅した.増幅した遺伝子断片は、塩基配列を確認した後に、IK分泌シグナルをN末端に付加することができるベクターpSecTagにクローニングし、CD44-Fc融合タンパクを哺乳細胞内で発現するベクターpSecTag-CD44FcおよびpSecTag-FibFcを作製した.これらのベクターをハムスター由来のCOS細胞に遺伝子導入を行い、培養上清2LからプロテインAアフィニティーカラムを用いて、組換えタンパクを精製した.得られた融合タンパクの収量はCD44-Fcで約600ugFib-Fcで約2mgであった.そこで、まず最初にこれらを用いて、A群レンサ球菌の上皮細胞に対する付着・侵入の阻害効果について検討を加えた.A群レンサ球菌の莢膜に対するレセプターであるCD44の融合タンパクでは、A群レンサ球菌の上皮細胞への付着・侵入に対してはほとんど効果が認められなかった.しかし、フィブロネクチンのタイプIリピートを組み込んだFib-Fcでは野生株の細胞への付着・侵入を約40%、莢膜欠失株では約80%阻害することが明らかとなった.そこで、Fib-Fcを用いてさらにヒト末梢血の多型核白血球のA群レンサ球菌に対する貪食能を検討したところ、Fib-Fcを添加した場合、コントロールに加えたマウスのIgG1と比較して貪食が約2倍に増加した.これらの結果は、A群レンサ球菌の細胞表面に存在するF1,Sfb1,SfbII,Fbp54,Fbaなどのフィブロネクチン結合タンパクは菌の細胞への付着・侵入に最も重要な役割を果たしており、これらの結合を阻害することにより効果的に菌の付着・侵入を阻害できることが明らかとされた.さらに、Fcとの融合タンパクによりオプソニン作用も増強されることが明らかとなった。
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