研究概要 |
光重合型レジンの表層には,大気中に存在する酸素によって重合阻害を受けた低(未)重合層があり,この層は着色あるいは摩耗を受けやすい層として修復物表面に欠陥として存在している。したがって,良好な修復物の予後を得るためには,この層を形態修正あるいは研磨時に除去することが重要であるものの,その確実な処理方法あるいは解決策についてはいまだに明確ではない。そこで,レジン修復物表層に存在する低重合層を除去する臨床手法の確立に関する研究として,とくに酸素不透過性樹脂に着目し,レジン充填時に使用するマトリックスとしてこの酸素不透過性樹脂を応用する可能性について検討することを目的として本研究を行った。すなわち,付形子としては,酸素透過性が既知である酸化ケイ素二軸延伸ポリフタレート,酸化アルミニウム蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレート,塩化ビニルデンコート二軸延伸ポリプロピレン,塩化ビニルデンコート二軸延伸ポリプロピレン,二軸延伸ポリエチレンテレフタレート,二軸延伸ポリプロピレン,および連鎖状低密度ポリエチレンの,合計7種類の高分子フィルムを用いた。表面物性の指標としてそのヌープ硬さ,歯ブラシ摩耗および0.1%オイルオレンジに対する着色性を検討し,以下の結論を得た。 1.ヌープ硬さは,照射面下0.1mmの深さ地点において高分子フィルムの酸素透過性の影響を受けた。その影響は,酸素透過性が低いものほどヌープ硬さが高く,酸素透過性に依存性があった。 2.歯ブラシ摩耗率および着色量は,いずれも高分子フィルムの酸素透過性の影響を受けた。その影響は,両パラメーターともに酸素透過性が低いものほど低く,酸素透過性に依存性があった。 3.表面物性が良好であった高分子フィルムは,酸化ケイ素二軸延伸ポリエチレンテレフタレートおよび酸化アルミニウム蒸着二軸延伸ポリフタレートであった。
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