研究概要 |
失われた歯冠形態および損なわれた機能を歯冠補綴物によって回復し.その回復した状態を長く維持していくためには,歯冠補綴物が歯周組織をはじめとする顎口腔系全体と機能的に調和していなければならない. 歯冠補綴に際しての隣接歯間関係の回復は咬合の回復,補綴物辺緑の適合とともにきわめて重要な用件の一つであり,その不適正な回復は食片圧入を起点とする歯周疾患,う蝕などの原因となる.食片圧入はHirschfeldなどが指摘しているように,単に隣接接触関係のみによるものではなく,咬合機能とも密接な関係にある.しかしながら,隣接歯間の動的関係を直接に調べる方法は未だになく,安静時に隣接歯間部にコンタクトゲージ,デンタルフロスなどを圧入して,その静的関係から間接的にその動態を推測する現状にある.そこで安静時ならぴに機能時の隣接歯間空隙の定量化を行い,接触点の咬合による動態を明らかにすることが本研究の目的である. 安静時および噛みしめ時における隣接歯間関係を明らかにするために,ハロゲン光とCCDカメラにより非接触的に観察,解析を行った. 生体で臨床的に正常と診断される接触関係にある隣接歯間部で,6部位中5部位において,歯の安静時には通過光が観察されたが,噛みしめ時には認められなかった.したがって,歯の安静時には隣接歯間部に空隙があって,噛みしめ時にはその空隙が閉鎖する方向に歯が変位するものと考えられる. 以上のことから,歯はその安静時には隣接歯間部に空隙をもって配列されていて,機能時には歯槽窩の中に押し込まれながら歯列弓の幅径を狭める方向へ変位するとともに隣在歯と緊密に接触して,歯間部への食片圧入を防御しつつ咀嚼機能を営んでいることが明らかとなった.
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