研究概要 |
本研究の目的は,長期間,十分な咀嚼機能が発揮されていなかった高齢者の刺激唾液分泌量ならびに味覚感受性が,良好な咀嚼機能を保持している高齢者に比べ,差異が認められるか否かを明らかにすること,さらに,義歯装着による咀嚼能力の改善に伴って,唾液分泌能と味覚感受性が向上するか否かを調べることである. 対照群として,平成12年度の新潟県高齢者大学教養講座受講生で新潟大学歯学部附属病院での面接調査に同意した60名の中から,天然歯や義歯によって良好な咀嚼機能が保持されている10名を選択した.被験者群として,無歯顎あるいは多数歯欠損症例で長期間にわたって義歯を使用せずに放置,または明らかな不良義歯を使用していた高齢者4名を選択した. 対照群には次の項目を検査した.1)刺激唾液分泌量:座位でパラフィンペレットを5分間自由咀嚼した時の刺激唾液分泌量を測定する.2)咀嚼能力検査:試作したグミゼリーを10回自由咀嚼後の溶出グルコース濃度から食品咬断率を算出する.3)味覚感受性検査:電気味覚検査法(直流陽極刺激)と濾紙ディスク法および全口腔法によって,味覚閾値を検査する.4)最大咬合力:3秒間最大噛みしめ時の咬合力をデンタルプレスケールで測定する. 被験者群には,必要な前処置後に,通法に従い補綴治療を行った(治療中の被験者もあり).対照群と同様の検査を治療前と義歯装着直後ならびに装着3ヵ月後に実施した.今後,6ヵ月後検査を予定している.
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