ヒト由来の細胞を用い組織工学的手法を用い、細胞ハイブリッド型人工骨の開発を目指した。まず、第一に骨牙細胞へと分化しうる細胞の採取法の検討を行った。 1)ヒト歯髄由来間葉系幹細胞の分取 われわれ口腔外科医が容易に入手可能な硬組織形成性細胞の入手源として歯髄組織を選択した。患者の同意のもとで、抜去した埋伏智歯より歯髄組織を採取し、ディスパーゼ、コラゲナーゼにより消化することにより、細胞を分離した。これをプラスティックシャーレに藩種し、付着した細胞を増殖回収した。 2)in vitroにおける骨牙細胞誘導能の検討 増殖した細胞を、アスコルビン酸、グリセロリン酸、デキサメタゾンの存在下で培養し、アルカリフォスファターゼ活性を指標として骨牙細胞(歯髄細胞)への分化能を検討した。その結果、ラット骨髄由来細胞と比較してほんの僅かであるが、デキサメタゾンの存在下ではアルカリフォスファターゼ活性の上昇を認めた。ついで、培養系にrhBMP-2を添加したところ、2-3倍程度アルカリフォスファターゼ活性は上昇した。反対に、FGF-2を添加するとアルカリフォスファターゼ活性は消失した。 3)in vivo骨(象牙質)形成能の検討 培養・増殖した細胞を多孔質ハイドロキシアパタイトに藩種し、3次元的培養を行った後、ヌードマウス皮下に移植した。4週後に摘出し組織学的検討を行ったが、ハイドロキシアパタイト内には線維性組織が入り込み硬組織の形成は認められなかった。今後、さらに培養方法、単体の検討が必要と思われた。
|