研究概要 |
HSV-tk/GCV systemによる遺伝子治療はbystander effectのほかに,宿主免疫の誘導による抗腫瘍効果の増強が大きな特徴である。アポトーシスによる細胞死は細胞融解による表面抗原の損失はないので,至適治療法によりアポトーシスを選択的に誘導できた場合,宿主免疫の誘導の可能性はより高くなると考えられる。 本研究はAdベクターを用いてHSV-tkを舌扁平上皮癌培養細胞株(HSC-3,HSC-4,SCC-KN,HSC-TF)に遺伝子導入し,その殺細胞メカニズムを解明するとともにアポトーシスを励起できるような至適ウイルス量とGCV濃度をin-vitroで検討した。 使用ベクターはAxCA-LacZ,AxCA-tkで,導入効率はAxCA-LacZを種々のMultiplicity of Infection(MOI)で移入し,X-gal染色で評価した。 GCV感受性試験はHSC-3はtkを種々のMOI,HSC-4,SCC-TFを1.25MOIで移入し,MTT assayで評価した。細胞動態の検討はAxCA-tkをHSC-3は5MOI,HSC-4,SCC-KN,SCC-TFは2.5MOIで移入し,GCV1μg/mlを投与し,TUNEL,DNAラダー,フローサイトメトリー,Annexin V-FITCウエスタンブロットで経時的に評価した。 結果は1)tk導入によるGCV感受性は,細胞株により異なっていた。 2)HSV-tk/GCV systemによる細胞死はTUNEL陽性細胞の出現,フローサイトメトリーにおけるPre-G1の経時的増加,Annexin V-FITC陽性細胞の出現によりアポトーシスの関与がうかがえたが,DNAラダーはすべてスメア状であった。 3)ウエスタンブロットでHSC-3,HSC-4でP53は不変であった。SCC-KN,SCC-TFにおいてBcl-2の上昇があった。
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