目的:日本人の体格は向上したが、頭痛、肩凝り、腰痛、集中力の低下等が問題視され、姿勢の悪さにも原因があるといわれている。姿勢の状態は、体重の分散として体重配分計の変化に表れる。本研究では、咬合・体重配分・姿勢の関連を6分割体重配分計を用いて検索した。方法:被験者は永久歯列の完成した男女33名で、6分割体重配分計を用いて、両足の足底6ケ所にかかる体重配分量を開脚、閉眼、直立で測定した。足底の6分割の部位は、両足の第1指部、他の4指部、踵部である。実験1では、被験者20名に対し、咬頭嵌合位での状態と、左右別に5mm厚のバイトブロックを臼歯部に咬ませた片側咬合挙上の人為的異常咬合の状態で、実験2では、被験者13名に対し、咬合異常者の咬合修正前後での体重配分量を測定した。個々の被験者の体重を100%とし、6分割された体重配分量を百分率に換算した。結果:実験1では、被験者の体重配分比の平均値を求め比較すると、左右差はわずかであった。実験2では、咬合修正後では、踵部にかかる体重の値が52.8%から48.9%へと減少した。また、第1指部(内)の値を1.0として他の4指部(外)、踵部(踵)それぞれの相対値を求めると修正前の左足1.0:1.3:2.8、右足1.0:1.3:2.3から修正後の左足1.0:1.8:2.8、右足1.0:1.9:2.6へと変化した。以上より咬合修正後は、左右足ともに体重配分比がモルトン比(足底の内、外、踵が1:2:3)に近似した。考察:実験1より、一時的に咬合異常が生じても直ちに姿勢の変化として表れにくい。実験2より、咬合修正により足趾にかかる体重の値が増加し、足趾にかかる体重の増加は体のバランスを保つのに有利に働くと考えられた。また、モルトン比が姿勢の状態を評価する基準になることが示唆された。以上の研究実施にあたり、被験者へは調査・研究の趣旨等を説明の上、同意を得て、個人の人権等には十分配慮した。
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