本年度における研究実施状況は、以下の通りである。 都内および埼玉県内の合わせて5ヶ所の老人保健施設・介護施設にて要介護高齢者の味覚閾値調査を行った。その方法は当初予定していた濾紙ディスク法から、4味質の味溶液をそれぞれ13段階の濃度に分け、シリンジにて1mlづつ口腔内に注入し味質を呈示してもらう、という遠藤らが開発した全口腔法へと変更した。濾紙ディスク法は味覚障害の部位を調査する方法であり、また方法が複雑なこともあり高齢の被験者にとって負担が大きい。そこで、今回は全口腔法に変更をして研究を実施した。この変更により調査の迅速化と、被験者の負担が軽減した。また、唾液のpHを測定することにしていたが、調査方法上、含嗽を繰り返すため、調査値に幅が出てしまう結果となり、測定を中止した。また、電気味覚計による調査も操作が煩雑なことと、全口腔法が電気味覚計による調査よりも優れた方法であるため、今回は行っていない。その他の事項については、研究計画書通りに調査を行った。その結果、4味質の中で塩味に関しては、口腔清掃によって味覚能の改善が見られるという結果が得られた。しかし、その他3味質については、今のところ統計上の有意差は見られていない。被験者数は40名程度であり、現在も被験者数をさらに増やしているところである。今後も引き続き調査を続けていきたい。なお、結果の一部を第11回老年歯科医学学術大会(横浜)と、第15回国際障害者歯科学会(マドリッド)にて発表させていただいた。
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