研究概要 |
蛋白質のアミノ酸配列決定に用いられているエドマン試薬PITC試薬よりも、高い検出感度を示す試薬を開発する目的で、本研究代表者らが開発しているアミノ酸の高反応性蛍光ラベル化試薬であるCIPICの分光学的特性を調べ、より高感度化が期待できる新規の化学発光性試薬としての有効性をこの研究で見い出した。 まずCIPIC反応によって生成されるアラニンのチオヒダントイン体(CIPTH-Ala)を合成し、化学発光現象の基本的な反応条件を設定した。次に、CIPIC試薬とCIPTH-Alaの蛍光量子収率及び化学発光量子収率を求め、光学的検出における感度の比較を行い、従来のエドマン試薬よりもCIPIC試薬が約20倍高い感度を与える蛍光及び化学発光性試薬であることを実証した。さらに、CIPICの誘導体が化学発光する反応機構を明らかにするために、化学発光反応によって生じる最終反応生成物をHPLC,LC-MS及びNMR等によって解析し、かつ推定される化合物を別途合成することによって、最終反応物はフタルイミド体であると決定した。これによりCIPIC及びその誘導体の化学発光母体はシアノ基の有するイソインドール骨格であることを明らかにした。この知見は、今後、新規の化学発光性試薬を開発する研究において価値ある成果である。また、CIPIC試薬を実用的なエドマンタイプの高感度試薬として実用化するために、21種類のアミノ酸をCIPICと反応させて逆相分配HPLCによって分離したとき、16種類のアミノ酸の分離検出に成功した。
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