レチノイド関連核内受容体RORはリガンド未知のオーファン受容体である。RORについては、リガンドの活性を評価する適切な評価系がないので、その特異的リガンドを探索するにあたり、まず、転写活性化能を検討するためのレポーターアッセイ系を構築した。Giguere博士より供与されたROR発現用プラスミドとコンセンサスなRORE(ROR応答部位)下流にルシフェラーゼ遺伝子をつなげたレポータープラスミド(RORE)-3TKLUCを用いて、COS-1細胞への一過性遺伝子導入を行った。この系において、RORは構成的にレポーター遺伝子の発現誘導を引き起こした。この結果はGiguereらの報告と一致する。RORのリガンド候補化合物としてCarlbergらによって報告されているメラトニンの効果を、このレポーターアッセイ系で検討したが、構成的発現に対する影響は見られなかった。また、RORのリガンド結合領域がレチノイド受容体RARと最も相同性が高いことから、レチノイン酸及びその天然、合成誘導体を用いて、ROR転写活性化に対する効果を検討したが、いずれも不活性であった。 RORの特異的リガンドを計算化学的に探索する目的で、RORのリガンド結合領域の3次元構造モデリングを行った。RARとのアミノ酸配列のアラインメントを行い、その結果と、結晶構造が報告されているRARγの立体構造を鋳型としてRORの立体構造を構築した。しかしながら、アミノ酸測鎖の自由度が大きいことなどに由来する複数のモデルが提唱され、現在、他の核内受容体を鋳型とするなど、より信頼性の高いモデリングの検討を行っている。
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