【目的】インフルエンザウイルスの型と亜型による臨床症状の差異について調査を行った。 【対象・方法】1999年1月から2001年3月に受診したインフルエンザ患者で発症72時間以内の症例を対象とした。病原診断は迅速診断キットとウイルス分離を行った。HI試験も行い併せて診断した。体温は受診時のもの、症状については出現比率の高いものから5項目を集計した。 【結果】A型のH1N1が54例、H3N2が98例、B型が44例の計196例で検討をした。平均年齢はH1N1 33歳、H3N2 41歳、B型が29歳で3つのグループの中でもっとも若かった。発熱に関して、平均体温ではH1N1 38.2度、H3N2 38.6度、B型37.9度であり、H3N2が最も高かった。患者の主訴はいずれの群でも発熱および全身倦怠感が最も多くかった。また頭痛、咽頭痛も上位を占めた。またH3N2およびBでは筋肉痛が多く、これに比してH1N1では頭痛を訴える患者の比率が多かった。B群で消化器症状の吐気、上腹部痛、下痢の訴えが多かった。通院平均日数はH1N1 2.1日、H3N2 2.5日、B型2.8日と3群とも平均で約2〜3日となり有意差を認めなかった。生化学検査でH3N2は白血球数が最も少なく、C-reactive proteinは最も高かった。 【考察】インフルエンザの基本的症状は発熱や全身倦怠感がよく知られているが、実際に流行しているA型(亜型を含む)やB型による症状の差異の検討は少ない。またこの差が臨床経過にどの様な影響を与えるのかも不明な点がある。今回の検討では医療費に与える影響の多い通院日数は、いずれの群でも有意差を認めなかったが、臨床的にH3N2が最も重症であると考えられ、しかもその流行規模も大きいため、注意して診療にあたるべきであると考えられた。
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