近年開発されたDNAマイクロアレイ技術は、現時点では主に遺伝子の発現プロファイル解析による腫瘍の個性診断への応用が注目されている。技術の応用は、未だ研究室レベルであり、臨床検査分野への応用は遅れている。しかしながら、DNAマイクロアレイ技術の原理を応用すれば、従来の方法に比べて効率良く遺伝子検査を実施できると考えられる。 多くの癌ではサイクリン依存性キナーゼCDK4/6の抑制因子をコードするp16癌抑制遺伝子が欠失している。そこで、p16遺伝子を含む9番染色体短腕の欠失診断に応用可能かどうかを検討する目的で本研究を以下のように実施した。 平成13年2月にヒトゲノム計画の成果として、ヒトゲノムのドラフトシークエンスが公表された。この配列情報を基に9p21の欠失好発部位に相当する範囲のsequence-Lagged site(STS)-PCRを開発した。これを用いて、各種癌細胞株における欠失地図を作成した。次に、少量の正常細胞と癌細胞から抽出したDNAを鋳型にして、全ゲノムを増幅するPCR法(Whole Genome Amplification;WGA)により増幅産物を得た。これらの増幅産物は、それぞれ異なる蛍光色素で標識し、ナイロン膜にスポットしたプラズミド・クローンとハイブリダイズした。蛍光発色を読み取り、用いた癌細胞で欠失している部位に相当するプラズミドのスポットは欠失と診断できることを確認した。本研究の成果をDNAマイクロアレイ技術に応用するために、平成14年度科学研究費を申請した。
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