研究課題/領域番号 |
12877388
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
網野 信行 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60028694)
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研究分担者 |
巽 圭太 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (00222109)
多田 尚人 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (80263242)
日高 洋 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (30243231)
泉 由紀子 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (60314316)
高野 徹 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (00263236)
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キーワード | 自己免疫性肝炎 / アルギナーゼ抗体 / CYP2D6抗体 |
研究概要 |
我が国の健康診断における肝機能異常を示すもののうち、50〜60%は脂肪肝であり、B型及びC型ウィルス肝炎は10〜15%程度である。残り約四分の一の症例では肝機能異常の原因がもうひとつよくわかっていない。従来より自己免疫性肝炎の存在は、我が国では比較的珍しいものと常識的に考えられてきた。その大きな原因は、自己免疫性肝炎の良い診断法が確立されておらず、現在用いられている診断クライテリアは除外診断によるスコアリングシステムが適用されているためと考えられている。自己免疫疾患の診断基準は一般的に不可逆的な病態にまで発展した、比較的典型的な症例のみを把握するために作られたものが殆どである。自己抗体測定を中心にして各種臓器の自己免疫病態を考えると、潜在病態が意外に多いことが推測される。例えば自己免疫性甲状腺炎では、臨床的に明らかな疾病の10倍以上もの潜在性自己免疫性甲状腺炎が存在することが甲状腺自己抗体測定法で我々により確立された。自己免疫性肝炎に関してもおそらく同様の考え方が適用でき、肝臓特異的な自己抗体測定法が開発されれば自己免疫性肝炎の疾病概念自身がかなり広がるもの推測される。しかし、現在のところ自己免疫性肝炎に関する自己抗体測定法は抗核抗体や抗平滑筋抗体が主流であり、汎用できる肝臓特異的自己抗体測定法は開発されていない。最近チトクローム酵素のCYP2D6に対する自己抗体測定法も開発されつつあるが、典型例の出現頻度は数%ときわめて低く、臨床的にあまり重要視されていない。 そこで今回我々は、肝臓特異的自己抗体測定法の開発を試みた。そのために先ず肝臓特異的な抗原としてヒトI型アルギナーゼをリコンビナントで作成し、それを用いてELISA法を開発した。この方法により抗アルギナーゼ抗体は自己免疫性肝炎のうちdefinitタイプで18.2%、prorableタイプで32.3%と予想外の高頻度で陽性であることがわかった。さらに、C型肝炎患者でも本抗体が20%の陽性であり、C型肝炎と自己免疫性肝炎の強い関連が示唆された。今後はこの測定法を用いマススクリーニングに応用すると同時に、他の自己抗体測定法、例えば抗核抗体・抗平滑筋抗体さらには抗CYP2D6抗体との関連を調べ、新しい自己免疫性肝炎の概念を提唱したいと考えている。
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