研究概要 |
本年度(平成12年度)は、地域に居住する成人期の障害者の「きょうだい(normal sibling)」に対して、全く外部からの支援を受けたことのない状態から、「きょうだい」同士の集団討議の場を持つまでのプロセスとその手続きの試作案を作成すること、障害者の「きょうだい」であることから派生する特有の体験の共有、障害者の「きょうだい」としての同立場での情報交換を目的とした試作的な集団討議の場面を提供し、その効果の評価を試みた。本年度の介入研究は、今回は都内のある知的障害者の家族会に所属する成人期の「きょうだい」を対象とした。その理由は、知的障害者の成人期の「きょうだい」は地域に居住しているなかで、障害をもつ同胞に関わっている専門職者、とくに看護職との関わりがほとんどなく経過している場合が多い。そのように看護職の関わりがほとんどない「きょうだい」に介入するなかで、看護職としての関わりの必要性がどの点であるのかの視点を得ることを踏まえるためである。 介入するまでのプロセスは、家族会の代表者に研究協力を得て、研究協力依頼文に家族会の承認を得た一文を追加し、家族会の主たる活動者より「きょうだい」の親に手渡してもらい(32通)、親から「きょうだい」に渡り、「きょうだい」からの返信によって研究協力を得る手続きをとった。10通返信があったなか、参加希望者は4名であった。参加者個々に場所および日時について電話連絡を行い調整を行った。集団討議場面の内容については研究者が独自にプログラムを作成し、計5回を行った。その結果、成人期の「きょうだい」の『特有の体験』である「(1)同胞の世話,家事役割」「(2)同胞に障害があることを友人に言えない」「(3)結婚に関する相手、その親の反応」「(4)親亡き後の生活」の全ての内容が話題として取り上げられた。またアンケート結果より、参加者全員が[きょうだいといってもかなりいろいろな立場がある」回答していた。また、5回後のアンケート結果より、「情報交換できた」「今後何か起こった際にこの集まり会を利用したい」「ほかのきょうだいにもこのような会を行ったほうがよい」と回答していた。以上の結果より、地域に居住する支援未経験の成人期の「きょうだい」に対し『特有の体験の共有』『同立場での情報交換』を提供できたことが示された。また、障害者である同胞(成人期)の健康管理についての対応方法について情報を得たいと考えていることが明らかになった。
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