前年度に得られた研究結果を基に、過去1年間、注射業務においてアクシデントを起こしていない臨床経験10年以上の看護師10名を対象に、注射業務における医師の指示受け段階で、異和感を感じた場面とその理由、その時の対応及び影響を及ぼした事象について、深い面接を行った。その結果、異和感を感じた理由としては、通常の投与・使用方法からの逸脱、患者の状態からの逸脱、通常の実施状況からの逸脱があった。その際、対象者は医師の指示を鵜呑みにしないで、単純ミスならここで防げるという明確な事故回避の意識を持ち、自分が納得するまで指示は受けないという強い信念をもち、確認行動や代替案の提示を行っていた。このような対応に影響を及ぼした事象としては、失敗体験の積み重ね、先輩看護師による申し送り時の質問、イメージしやすい言葉による指導、憧れの先輩看護師の存在、医師からの信頼の獲得があった。したがって、指示受けの場においても、医療事故を回避する有効な機会となることが示唆された。
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