研究概要 |
平成12年における研究の目的は、日本における中途失明者の障害の実態および失明から生活自立にいたるまでの体験とその間の看護職の関わりについて明らかにすることであった。そのために、以下の2点について検討を進めた。(1)中途失明者の生活実態に関する研究報告、障害を受ける前やその後の心理社会的な側面における研究の動向、(2)障害をある程度自分のものとして捉えることができる過程にある視覚障害をもつ人との交流の場(研究フィールド)の検討である。 まず、障害、中途失明の二つの概念を中心に、視覚障害visual impairment、盲blind、弱視low visionなど関連ある概念を広く探索し、日本国内と海外の研究動向を探った。その結果、日本では看護学の研究は乏しく、内容は視覚障害に関する総説論文や糖尿病などの疾患に関連した事例報告が主であった。外国文献でも同様の検索を行ったが、海外の研究は専門誌の数も多く、過去5年間を検索しただけでもおおよそ120件の関連文献があった。 この中から、中途失明者の心理社会的な問題として、self-esteemの変化、抑うつ傾向などがあがり、さらに中途失明者の生活の変化に関する実態も明らかになった。これらと比較すると、日本における問題は、医療から生活訓練,社会復帰施設へとつなげられる過程のなかに、「家にいる」時期がかなり長く存在し、十分な情報提供のない状態にさらされていると考えられた。 現在,この時期にどのように過ごされているかを明らかにすること、医療の中での看護職者の関わりが明らかになると考え、1施設における生活訓練途上にある対象者からデータ収集を進め、視覚障害者の訓練期までに体験された現象の分析を行っている。
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